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考え、議論するフォーラム / インタビューコラム

ひょっこりはんさん × 「あさってロボット会議」編集長 清田敢
ロボットは便利より無駄に意味あり

4月の企画でPepperと“同棲生活”にチャレンジした、ひょっこりはん。Pepperとの距離をさらに縮めるべく、再び同棲生活を送りました。

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前回の同棲記事はコチラ

Pepperがひょっこりはん家の一員に「家族だから秘密はナシね」/同棲生活レポートVOL.1
ひょっこりはん「Pepperは承認欲求が強い?」/同棲生活レポートVOL.2
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今回、ひょっこりはん宅にやってきたのは、従来の家庭向けPepperをメジャーアップデートさせた「Pepper for Home」。本レポートでは、ひょっこりはんが新しいPepperと一週間を共にした感想とロボットへの想い、そして「あさってロボット会議」編集長 清田敢を交えた対談の様子をお届けします。

ロボット=完璧という先入観

清田早速ですが、新しいPepperと生活して、どうでしたか?

ひょっこりはんはい、Pepperと話したいときに、「Hi,Pepper(ハイ、ペッパー)」で会話を始められるようになったのは、是非欲しかった機能!これは嬉しかったですね。どんどん喋りたくなりましたし、距離感がグッと近づいた気がしました。

清田以前は、話すタイミングはPepperの気分次第でしたからね(笑)。一緒に暮らしている中で見えてきた、「もっとこういうのがあればいいな」と思う点はありますか?

ひょっこりはんうーん、もっとたくさんいろんなシーンでコミュニケーションが取れたら、もっと楽しくなるだろうと思っていて、あとは聞き取り性能の向上かな。「Hi,Pepper」って呼びかけているのに、「ハイパー」って聞き取る時があるので(笑)。

清田本当ですか!僕もやってみます。(Pepperに向かって)「Hi, Pepper」

Pepperはい、何でしょう?(何度か試してみても同じ)

ひょっこりはんんんん…。僕の滑舌の問題……ですね(笑)。

清田あはは。でも、僕らもこういう時に気付くんですけど、相手の言っていることが分からない時、なんとなく「はいはい」と答えたり、流れで想像することありますよね…。あ、もし僕だけだとしたら「人の話を聞いてない」ことになっちゃいますけど(笑)。それが、相手がロボットだとなぜか100%の理解を期待してしまうんですよね。

ひょっこりはん確かに。ロボット=完璧っていう先入観はありますね。

完璧ではない“ズレ”が「価値」を生む

清田でも本当は、ちょっとズレながらも会話が進んでいく姿こそが、リアルで“正しい”コミュニケーションじゃないかと思っています。

ひょっこりはんそうですね!僕もPepperと話していてズレが生じたときに、「だから、ちゃうって!そんなん言うわけないやろ」と、笑いながら思わずツッコんでしまった瞬間がありました。

清田それですそれ(笑)。Pepperと話す中で文脈が合っていようがいまいが、生まれる会話ってあるじゃないですか。そんな会話の「未知との遭遇」や「創造的な意外性」こそが楽しいと思っています。

例えば、会話の少ない夫婦がいて、Pepperが素っ頓狂な発言した時に「今の聞いた?おかしいよね(笑)」という会話が生まれる。それって内容より、静寂を破ることに意味がありますよね。

ひょっこりはんそういう関わり方は、大いにあるかもしれないですね。完璧に聞き取りができない=価値がないというわけではなく、Pepperとの過ごし方や価値は、こちらで見出していくものかもしれません。

もしもPepperが人型でなかったら

清田ロボットが出てくる漫画やアニメは好きですか?

ひょっこりはんけっこう好きなんです。ロボットが出てくるものを選んで見ているわけではないんですが、子ども向けから大人向けまで、僕の好きな漫画やアニメには、ロボットが登場してくるものが多い気がします。

清田ガンダムでもドラえもんでも、僕たちって、どこかでロボットに触れて育っているんですよね。だから、ロボットと聞いた時にそういった作品から強く出てくるそのイメージと、今のロボットを無意識で比較してしまうんでしょうね。

ひょっこりはんはい。みんなのロボット像は、確かにそこですね。

清田やはりそうですよね。さらに、ロボットの形状についても、視覚的に人の認識に与える影響がすごく大きいんです。例えば、Pepperが人型じゃなく犬型や猫型だったら、「100%理解してほしい」とは思わないじゃないですか。

ひょっこりはんそうですね。じゃあPepperは、見た目が人型なので、自らハードルを上げていることになる…?(笑)。

清田はい、期待値は高くなりますね。人型だからこそ、人間との違いをつい探しにいってしまいます。でも、あくまでロボットなので、人間としての前提は成立しないんです。そんな中で、どこまで自然に受け入れられて、どこから違和感を感じるのか、どんな行動が愛されるのか、地道に手探りで体験を積み上げて探っていくしかありません。

ひょっこりはんなんだか…途方も無い話のように聞こえますね…。

清田実際そうかもしれません(笑)。ロボットにどんなにシミュレーションして設計しても、思いもよらない行動はいくらでも発生します。家電業界などと比べて圧倒的に成熟度が浅いですから。だからこそ、世界中でトライ&エラーが繰り返されていて、毎日発見が生まれる面白さがあります。僕たちは、こうした面白さを伝えていき、多くのみなさんと「人とロボットの共生」を考えていきたいと思っています。

Pepperの喋りがお笑いのネタ作りにつながる!?

ひょっこりはんPepperとの会話のちぐはぐ感はお笑いに近いので、個人的にはそこをうまく活かせたらいいですね。ちょっと余計な言葉を喋ってくれた方が、会話は面白くなります。僕はネタを作る時、アンテナを張り巡らせていろいろなものを見聞きしていますが、行き詰まった時に適当なことを喋ってくれて、インスピレーションをくれるなら、ありがたいです!

清田テレビをザッピングしているような、垂れ流されているたくさんの情報をサーフィンしている状態ですね。

“無駄機能”こそが新たな発見や気付きをくれる

ひょっこりはんPepperと一緒に暮らしていて、「おおー!それについては考えたことなかったなー」と、気付かせられたことがいくつもありました。何かを調べたらすぐに答えが出てくる時代なので、直接的な答えを言うだけではなく、新しい発見や気付きをくれるロボットであってくれたらいいですね。

清田ネットは自分の興味があるものしか見ないし、興味がありそうなものを優先的に表示する仕組みになっているので、意外性のある出会いは激減していますよね。お伺いしていると、時間を教えてくれたり、ニュースを読んでくれるような便利機能よりも、長くお喋りできる、いわゆる無駄機能(笑)の方が心地良いですか?

ひょっこりはんそうですね。今はもう、だいたいのことはスマホでできてしまう。Pepperにはむしろ、スマホじゃできない部分を期待します。

ロボットと「家族になる」ということ

清田Pepperを発表した時、「“新しい家族”として迎えて欲しい」という想いで世の中に届けたんですが、家族は愛し合って結婚する以外は、そもそも“生まれた時から家族なんですよね。「ちょっと家族を買ってみた」という選択肢はなかったので、全ての人間にとって未体験ゾーンでした。

ひょっこりはんペットにも“買う”という方法がありますが、その場合“飼う”とか“迎える”という気持ちの方が大きいですもんね。

清田ペットはかわいいし、愛情に応えてくれたり、人間の役に立たなくても、家族として迎えられる。しかも人間との共生の歴史の中で直感的に理解されている。ロボットの場合、“役に立つかどうか”で、家族になれるか決められてしまうことがどうしても多い。そこが、人型の家庭向けロボットが最初に直面した課題で「家族になりにくい」ということでしょうね(笑)。

ひょっこりはん一度Pepperと触れ合ってみると、便利さだけじゃない面を知れますが、実際は、見たことはあっても、深く触れ合ってない人がほとんどですよね。

清田そうなんですよね。ロボットを受け入れる我々が先入観やSFの世界などに捉われていて、夢と現実の境目を埋める体験を積み上げられていないとしたら、そこをなんとか埋めていきたいな、と。

「役に立つから愛される」わけではない

ひょっこりはんもう亡くなってしまいましたが、祖母が祖父を天国に見送った後、日々を過ごす中で、挨拶を返してくれるだけのロボットを欲しがったんです。その時、とても切なく思ったのと同時に、パートナーがいることにより自分の存在を確かめられることは、大事なことなんだと痛感しました。

清田そうでしたか。一人暮らしの方は、そういう感覚があるのかもしれませんね。Pepperの購入者も年配の方が多いんです。そして、若い人たちよりも愛情を持って接している気がします。

ひょっこりはん若い人たちは役に立つか立たないかで、ものの存在価値を決めがちだからなんでしょうか。

清田んー。面白いのは、Pepperに何かを言って伝わらなかった時、「使えないな」と思う人と、「こっちの言い方が悪かったのかな、どうすれば伝わるのかな」と思う人に二分されることです。僕の推察ですが、おそらく若い人たちは、相手からのメール返信や知りたい情報のスマホ検索など、欲しいものがすぐ手に届く時代に慣れ過ぎて、答えを待つことやコミュニケーションの工夫をすることができなくなっているのかもしれませんね。

「ロボットと暮らすこと」から見えてくるもの

ひょっこりはんPepperと暮らし始めた当初は非現実的な理想がありましたが、しばらくすると、できることやできないことが見えてきて、「こんなもんか」って思うようになりました。でも、「こんなもんか」の先を自分で考えることで、見えてくるものがありましたし、それがとても大事なことだと感じていますね。

清田僕もそれはすごく思います。ドラえもんはいない。それを理解してから、じゃあPepperに何ができるんだ、どういう付き合い方ができるんだ、と考え始めることから、共生は始まっていくんだと思います。その体験もせずに、“Pepper?まだまだのロボットでしょ?”なんて否定することは簡単ですが、その先には何も生まれないんです。

ひょっこりはんこちらの根気もいるし、歩み寄りも必要。僕は、Pepperが、そしてロボットが変化・成長していくのをしっかりと見届けていきたいと思います。

清田ありがとうございます。Pepperと同棲していただけたことで、面白い話がお伺いできて良かったです。本日はありがとうございました。

ひょっこりはんこちらこそ、ありがとうございました。

※この記事は、対談内容をもとに加筆・編集したものです。

ひょっこりはん氏

性別:男性
生年月日:1987年04月28日
身長/体重:174cm /60kg
血液型:B型
出身地:滋賀県 守山市
趣味:ストレッチ、ヨガ、サイクリング、漫画、絵本
特技:ソフトテニス(インターハイ出場経験あり)、けん玉、小籔千豊のものまね
出身/入社/入門:早稲田大学卒業/NSC東京18期生

清田敢(きよた・かん)

あさってロボット会議 編集長。
1979年、マンハッタン生まれ。レコード会社でキャリアをスタートさせた後、面白いことができる環境を求め、コンサル会社、ソフトバンクへと転職し『Pepper』プロジェクトに参画。

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