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考え、議論するフォーラム / コラム

ロボットをデザインするということ

「Whiz」におけるプロダクトデザインマネジメント 草間 正博

ロボットにおけるデザインの役割

 「ロボット」という言葉を聞いて思い浮かべるものには工場で稼働する工業用ロボット、アニメに出てくるようなキャラクター、人型のリアルなヒューマノイド、動くことはないけどなんとなくロボットっぽくも感じるスマートスピーカーなど、人それぞれに思い浮かべるものが幅広くあると思います。ロボットは、「こういう物である」という定義が一般的な共通認識としてまだ形づくられていないプロダクト。今回はそういったプロダクトの「デザイン」を担う中で、日々考えていることをプロダクトデザインの観点からご紹介させていただきたいと思います。

 「デザイン」という言葉は一般的には外観を整える、魅力的にするといった意味や要素として使われることが多いかと思います。実は、そういった意味での「デザイン」は、デザインという領域でカバーされているほんの一部分にすぎません。もちろんロボットのデザインにおいても、他のプロダクトと同様にプロダクトの外観や箱に貼られるラベルのデザインなどを考えますが、ロボットだからこそほかのデザインと大きく違うところがあると感じています。それは、ロボット産業自体がまだ黎明期であるがゆえに、デザインでそれが「何であるか」をしっかりと示していかなければいけないところにあるように思います。

 今まで見たことのないモノというのは中々理解されにくいものです。例えばクルマといえばタイヤが四つあれば車と言えます。羽がついて空を飛べば飛行機と言えます。でも何がついていればロボットと言えますか?手?足?顔? このように、まだ「これはこういうものだ」と定義がなされていないもののデザインは、それが「ロボット」だと認識するために必要な「デザイン」とは何かを考える必要があるのです。

例えば、世界一速い車として見せられたものが戦車のような大きくてごつごつした車だったら…。もしくは、世界一切れる刀として出てきたものが先の丸いナタのようなものだったら。はたまた世界一かわいい動物と言われて出てきたものがムカデみたいなものだったら。(ムカデ愛好家の皆さん、スミマセン。。。私もとても興味深い生き物だと思っていますが、その話はまたどこかで。)

「え、これが?」ってなりますよね?

 デザインの世界ではform follows functionという、建築家ルイス・サリバンの有名な言葉があります。これは形態は機能に従うことで自ずと美しいものになっていくということを表す言葉なのですが、私は黎明期のプロダクトのデザインには、機能だけでなく、そのものがどういう存在であるのかといったメッセージをより強く訴求していく必要があるように思います。
まだ見たことのない新しいプロダクトがどのようなものであるのか、ましてやそれが見慣れぬロボットである場合、こういったメッセージこそが、そのモノを理解し、違和感なく受け入れるためにはとても重要な要素であると感じます。

脱堅牢なデザイン

 昨年11月に新商品の自律清掃ロボット「Whiz」を発表しました。これまで業務用の清掃機器業界においてマニュアルの清掃機器は数多く使われていますが、ロボット掃除機はまだ広く普及はしていません。そうした際に、どの様なデザインであればこのモノを分かりやすく理解してもらえるかをしっかり考える必要がありました。

 まず伝えたいことは、今までのマニュアル清掃機器と同じく、機能的であること。簡単に言えば、取扱説明書を読まずとも大体使い方がわか分かり、なおかつ業務用であるがゆえに堅牢であること。それに加えて、ロボット掃除機とはどういうものであるか説明し、理解してもらうには、その違いを外観でも示して行く必要があると考えていました。  
様々な案を検討していく過程でまず考えたのは、このプロダクトは「道具」ではなく「自律的」に動いていくロボットであること、つまり自律的に障害物を回避し掃除をするスマートな存在であり、業務用機器で見られるようなぶつかることを想定した武骨なデザインは必要なく、むしろシンプルに仕上げることでそれを外観的に伝えられるのではないかと考えました。

また、「Whiz」という名前にも込められているとおり、私たちは、この製品が「人と共に働く存在」になってほしいと考えているため、親しみを感じられるよう、丸みを帯びた3次曲面の有機的なフォルムを採用し、光沢のある白く明るい外観を採用することで清潔感、モダンさを表現しています。

こういったことを考えながらデザインを進めてきました。このプロダクトを見て少しでもそういった込められたメッセージを感じ取っていただけていたら嬉しいです。

 今後様々な新しい価値を持ったロボットが市場にどんどん出てくるかと思いますが、「それが何である」といったメッセージを考えること、そのメッセージをデザインでどう伝えるのかは、新しいものを世の中に出していき、受け入れられるためには重要なことだと思っています。