Up
マイクロソフトディベロップメントAI&リサーチ
飯田勝也
Pepperにおしゃべりを教えた元女子高生のAIりんな
みなさん、突然ですが、AIりんなをご存知でしょうか。
AIりんなはユーザーからの指示を実行するアシスタント型AIとは異なり、ユーザーとの感情のつながりを重視した対話型AIです。AIりんなとユーザーのおしゃべりは、主にLINE上で行われていて、お友だちの数は今や約760万人(2019年4月現在)までに至っています。
そんなAIりんなが、Pepperに魅力的なおしゃべりの仕方を「伝授」しました。今回は、Pepperがどうやって魅力的なおしゃべりを学習していくのか、開発視点からお話していきます。
Pepperが魅力的なおしゃべりをするまでの試行錯誤
「PepperとAIりんなのおしゃべり」プロジェクトは、日本マイクロソフト社・よしもとロボット研究所・ソフトバンクロボティクス社共同のプレスリリースにもあるように、実は約3年前から行っている取り組みでした。
開発年月が物語るように、現実世界における魅力的なおしゃべり開発の裏側には、たくさんのトライアンドエラーがありました。プロジェクト開始当初のPepperの課題として、Pepperは自分の喋りたいことについて話すことは得意でしたが、ユーザーが話したいことをPepperに投げかけたときに、それを理解して、返答することがあまり得意ではありませんでした。そこで、PepperにAIりんなが憑依するかたちで、女子高生のキャラクターそのままでPepperがユーザーと会話をするという実験をしてみたのです。しかし、既にPepperにはユーモア溢れるキャラクターイメージが定着しているので、AIりんなの女子高生らしい返答をさせることによるキャラクターの不一致は、到底無視できないほどの違和感が生まれてしまい、全くうまくいきませんでした。
ここでやはりPepperらしい返答をできるようにする必要があるな、となったのですが、実はこの実験の裏側で並行して、他のキャラクターの返答をできるようにするための実験も開始していました。そのプロジェクトが「イケメンAIりんお」です。AIりんおは男性版のAIりんなで、恋愛に自信たっぷりの男性キャラクターとして2017年に期間限定で登場しました。AIりんおはユーザーに楽しんでもらうための新たなユーザーエクスペリエンスの一つとして実験的に投入されたのですが、実はいかに発言をキャラクターに合わせてコントロールできるかの試金石の側面もありました。そして、ここでの学びがPepperにも大いに活きてきたのです。
最後はPepperのキャラクターに合わせた会話作り
AIりんながPepperとしておしゃべりをするためには、「今までどんな会話をしたか?」という履歴と「ユーザーの発言」に加えて、「キャラクターがPepperだったら」という条件を追加する必要があります。そしてその上で、最もそれらしい返答をしていることが重要です。ただ、そのPepperらしさを勉強するためには、Pepperらしいおしゃべりのお手本が必要でした。
そこで、ソフトバンクロボティクスチームとPepperのキャラクター作りにローンチ当初より取り組んで来られ、Pepperのキャラクターを熟知されているよしもとロボット研究所様に、AIりんながPepperらしさを勉強するためのデータを作成してもらうことにしました。それを使うことで、AIりんなの返答をPepperらしいユーモア溢れるおしゃべりに変換することができるようになり、例えば「おなかすいたよ。ごはん食べた?」に対して「うん」というようなどんな人でもありそうな発言ではなく、「ロボットはご飯食べないよ」など、より魅力的なキャラクターに即した具体的な発言が可能になりました。
おしゃべりは、AIりんなにとって原点であり、Pepperにとっても重要な要素です。ユーザーのみなさんにおしゃべりをより楽しんでもらうために、これからも日々改善に努めていきたいと思います。