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考え、議論するフォーラム / インタビュー

ホリエモン×冨澤CEO、
同学年の2人が語るニッポンのロボットの未来

最初の話は「和牛」!?

冨澤じつは、堀江さんとは1972年生まれの同学年なんですよね。それもあって、対談するならだれがいいかっていう話の時に「堀江さんと話してみたい!」と言ったんです。

堀江そうなんですか。光栄です。今日はよろしくお願いします。
いきなりですけど、僕がやっている「WAGYUMAFIA(ワギュウマフィア)」という焼肉レストランに、御社の幹部が常連になってくれてまして(笑)。

冨澤へぇ、そうなんですか!どんなコンセプトのお店なんですか?

堀江文字通り、和牛ですね。東京と香港で今、5店舗くらい展開しているんですけど。スーパーハイエンドで、客単価3万円ぐらい。日本は神戸牛メインですね。

冨澤ステーキですか?焼肉ですか?

堀江ジャンルには縛られず。僕は食べ手なんで、食べ手の感覚だと、月に1回行きたくなるレストランって結局はB級グルメだったり、定番料理なんですよね。最近の創作料理は蟻(アリ)が出てきたりするけど(笑)、そういうのは1回で飽きちゃうんで。
僕らが出しているのは例えば和牛のカツサンド、ひと箱35,000円とか。

冨澤へぇー。それ、食べてみたいけど、そもそも35,000円のカツサンドは売れるんですか?

堀江それが毎日売れるんですよ。来客の95%がインバウンドで。
みんなインスタを見て来店する。うちはお客さんのアカウントをタグ付しているだけなんですけど、富裕層の人がアップしたものを富裕層の友達が見て「日本に行ったらあのカツサンド食わなきゃ」と。

冨澤なるほど、世界から来るわけですね。

堀江あとは餃子、牛丼、カレーなんかも。炭焼きのステーキももちろん出しますけど。
肉寿司の上にウニとキャビアをのっけたり。アパレルも作っていて、今日着ているTシャツもそうなんですけど、「シャトーブリアン」って書いてあるんです。

冨澤あ、ほんとだ(笑)。今度ぜひ行かせてください!

駆け抜けたIT黎明期

堀江冨澤さん、ソフトバンクに入ったのはいつぐらいなんですか?

冨澤2000年4月ですね。

堀江あ、じゃあ結構長いんですね。もう20年選手。

冨澤相当古い方ですね。最初は別の通信大手に入って3年ほどやって。そこからソフトバンクに入社しました。

堀江ソフトバンク的には何をやっていた頃ですか?

冨澤広末涼子さんを起用して、モデムのタダ配り戦略とかで旋風を巻き起こした例のヤフーBBの直前ぐらいです。僕は流通の営業で入ったんです。最初はパソコンソフトとかを販売してましたね。

堀江Windowsのライセンスとかですか。なるほど。

冨澤1年くらいして、「極秘の大プロジェクトがあるんだけど、お前、元電話屋だよな?ちょっとこっち入れ」と言われて。それがヤフーBBでした。それからテレコム買収、ボーダフォン買収、と買収するに従って色々担当して、2014年からはロボットをやっています。

堀江ソフトバンクが突如、ロボットをやるって聞いて正直「どうして???」って思いましたねえ。

冨澤じつを言うと、私も最初「なんで!?」と思いました(笑)
堀江さんは孫正義には会ったことありますか?

堀江もちろんもちろん。孫さん、お元気そうで(笑)

冨澤おかげさまで(笑)というより、日に日にロボット熱が高まってますね。彼の元には世界中の先端企業の情報が集まってきてますから、「こんなのあったけど、どうだ?」「ここが面白いからすぐに会ってこい」と。

堀江昔の勢いからまったく変わらないところがすごいですね。むしろどんどん加速しているというかね。

冨澤自分のボスのことをいうのもなんですけど、すべてにおいて、あの人自身の吸収力というか成長力がすごいんですよね。気がつくとどーんと進化している。部下のほうが必死に追いかけてる感じです。

堀江ビジョンファンドのスケール感とかスピード感とかも、確かに昔とは比べ物にならない爆発力ですよね。

冨澤やっぱりビジョンファンドは大きいです。世界中のAIやロボットのユニコーンから情報がダイレクトに集まってくるし、実際に我々のさまざまなロボット開発にもビジョンファンドの投資先がどんどん絡んできていて、すごいことになってます。

冨澤堀江さんが孫と知り合ったのは何の件ですか?ニッポン放送を買収するときとか?

堀江いや、あの後くらいですかね。

冨澤そういえば、その後、選挙に出馬もされましたね?

堀江選挙も戦略的にやってて。あれはチャンスでした。僕はあのとき史上最強だったと思います(笑)。亀井静香さんを倒せば200人ぐらいの若手が僕の派閥に来ると読んでて、自民党の総裁選は国会議員の票を取ればいいので、僕が自民党総裁になれた可能性はあったんじゃないかなあ。

冨澤ということは、首相になりたかった?

堀江逆に首相にならないと政治家になる意味ないでしょ?(笑)

冨澤堀江さんと言えば、そういう一連のダイナミックなイメージなんですけど、最近は少し落ち着いているというか。刑務所にも入ったわけですけど、何かそういうのが変わるきっかけになったんでしょうか?

堀江いや、自分ではそんなに変わってないんですよ。また違う世界が見えているんですよね。

冨澤へぇ!そこのところ、すごく興味あります。

堀江違う世界を狙って仕込んでいるんで。例えばインターネットも、一般の人たちは何もわかってない93~94年ぐらいからコツコツ仕込んで98~99年にブレイクして。それでも一般の人たちはまだ知らなくて。
そこから3~4年かかって、球団を買うとか言って初めて知名度があがったけど、それまでにじつは仕込みに10年ぐらいかかっているんですよ。

冨澤なるほど。仕込んでる時は、もちろん表には見えにくいし、先に爆発しそうなものを仕込んでいるわけだから。では、今はそういう時期になるんですか?

堀江そうですね。「ライブドアみたいな“普通の”会社をもう一回作らないんですか?」とよく聞かれるんですけど、一回やって手放したから飽きちゃってまして。今は、世界で知名度を上げるにはどうしたらいいかってことを考えて、そういうアプローチしかしてません。
だからロケットをやったり、和牛をやったり。

冨澤そう言えば、堀江さんと言えばロケットもそうですよね?
打ち上げ成功おめでとうございます。初歩的な質問なんですけど、なぜロケットをやろうと思ったんですか?

堀江宇宙に行った人って、のべ500人ぐらいしかいないんです。アポロは50年も前に月に行ったのにですよ。ロケットなんて単なる移動手段で、例えばプリウスなら数百万円なのに、毎回数億円でスーパーカー作ってるみたいな世界なんです。僕たちはプリウスでいい。必要最小限のロケットを大量生産したら量産効果が出て安くなる。
そうなると宇宙ってすごく身近になるはずなんです。

冨澤つまり、車の宇宙版ってことですか?ロケットを販売する?

堀江打ち上げサービスを提供するってことです。インターネットでいえば接続に何十万もかかってた時代があったけど、それが何千円になったことで爆発的にネットが普及したのと同じです。
僕らのロケットはいいポジションにいて、あと30億あったら2年で軌道投入できます。ロードマップはできてますから。さらに200億とか投下すると確実にスペースXと同じものが作れるんです。

注目は「手」か「足」か

冨澤さて、では、そろそろロボットの話しましょうか(笑)。

堀江僕、ロボット系の取材は結構やっているんです。

冨澤そうなんですか?でも、うちには取材に来てないですよね。

堀江行ってないですね。僕はヒューマノイドよりも、手とかパーツに興味がある。足にはあんまり興味がない。(ソフトバンク傘下の)ボストン・ダイナミクスはちょっと違うかなと思っていて。ごめんなさいね、なんか。

冨澤いやいや、気にせず、全然本音で話してくれていいので。
ヒューマノイドや足的なロボットより、手というパーツのほうに興味があるということですね?堀江さんの言う足というのは、2足歩行とか4足歩行ってことですか?

堀江車輪も含めてです。

冨澤手は重要です。でも順序としては、私はやっぱり手よりも足、つまりモビリティのほうが早く革命が来ると思っているんですよ。
そういう意味では、ブレイクスルーするものを片っ端から現実の用途にはめて行って、革命を起こしてやろうという気概は持っていますね。

堀江ソフトバンクっぽいですね(笑)。

冨澤最初はPepperを送り出しました。数字は非公表ですが、その知名度はとても高いです。とにかく、「ソフトバンクは携帯だけの会社じゃないぞ、ハイテクだし、最先端だし、世界を変えようとしている会社だぞ」とアピールする効果は圧倒的にあったと思ってます。

堀江なるほど(笑)。

冨澤例えば、この前、画期的な掃除機を発表しました。
基本的には業務用で、企業向けなのでまだあまり知られていませんが、掃除に革命を起こす製品だと思っています。

堀江何がすごいんですか?

冨澤もちろんAIを使った自動運転だし、とても操作が簡単だし、人を雇うより安いのは、まあ当たり前として、一番の売りは、、、

堀江一番の売りは?

冨澤とにかく、綺麗になるんです!
掃除機なんだから、あたりまえだろ、と思うかもしれないけど、いま日本の掃除業界はすごい人手不足で、掃除をやってくれる人自体がどんどん減っている。
人手が足りないとどうしても、汚さが目立つとこだけ優先的に掃除することになる。実際には目に見えないゴミがあるけど取りきれない。機械ならそれをくまなく吸い上げます。

堀江そういう意味で、日本は「ロボットに仕事を奪われる」とか言ってる場合じゃないわけですね。むしろ、「ロボットさん、仕事を手伝ってくれてありがとう」となるはずですよね。
ちなみに、Pepperは今、どんな感じなんですか?

冨澤Pepper、じつは見た目は変わらないようだけど、進化してるんです。
何回も何回も無数にアップデートしてます。あれは我々のアイコンで、近々技術とニーズがミートして「ボン」とジャンプアップすると思います。
ロボット事業で一番大事なことは、一回こっきり「こんなことできます!」っていうのは実は簡単なんです。でも、それを現実の環境や個別の条件にあわせて安定的に動かすっていうのはイバラの道で。お客さんと会話し、何度も改良を重ねて、っていうことが大事で。
そういう意味ではPepperは何光年も先を歩いていると思いますよ。研究所でこうだろうなと出したものは結局、市場には通用しないんです。

堀江そういう意味では、あいつの一番の得意分野はなんなんですかね?

冨澤いま一番勢いがあるのは教育分野ですかね。小学校で子どもたちのプログラミング教育をPepperにさせているんですけど、生徒と先生の満足度が97%と非常に高い。
先日も中国に2000台、プログラミング教育のために無償提供しました。孫さんが、Pepperを自分の子どもみたいに思っていて、そういう活動にはものすごく積極的です。

ロボットの可能性とこれからの働き方

冨澤ちなみに、堀江さんはロボット事業をやる気はないんですか?

堀江ロボット事業的なものはやっていますよ。
この間、エストニアに行ったとき、めっちゃいいベンチャーがあって。クーラーボックスに車輪をつけて自動配送させるんですけど。それにヒントを得て、うちらはハコボットという会社をこの間作った。過疎地で、コンビニとか弁当屋で高齢者の家に自動配送する。積んでるものも安いし、盗難や犯罪のリスクがあんまりない。自動運転では、これが一番最初にくるだろうなと思って。

冨澤配送は確かに非常に実用化に近いですよね。人を載せているよりも荷物のほうがやっぱりリスクは少ないですし。

堀江配送の人件費とか人材確保とか考えたら、使えるものを考えたら過疎地ではすぐに導入されると思いますよ。

冨澤他にも日本でロボットビジネスでいけそうなものはありますか?

堀江例えば、ホームスピーカーみたいな、LINE ClovaとかAlexaとか。あれはそのうちイヤホンになると思っていて。Amazon Echoって持ち出せないし、イヤホンはその点パーソナルだし、モビリティもある。これもひとつのAIロボットですよ。
その文脈だとロボットビジネスはめちゃくちゃ可能性もあるし、生活の中に普及すると思ってます。
あとは、飲食業帯の自動化は興味ある。無人の焼肉屋とかやってみたいですね。

冨澤そうなんですね!フードテックもいま面白いですよね。でも、焼肉っていう発想なかった(笑)。

堀江店員はいるんだけど、それはDJで。肉DJが盛り上げてる。世界初のパック焼肉で、冷蔵ケースからパックされた肉を取り出して客が自分で焼く。支払いもQR決済にして。レジもいらないし、調理場もいらない。
あと一歩進んで完全オートメーションの肉切り工場みたいなのもできれば。全自動焼き鳥マシーンみたいな(笑)。

冨澤串うちロボット?

堀江いや、串うちだけでなく、丸鶏を入れたら全部部位ごとにカットして、焼き鳥になって出てくる。焼き鳥のポイントってできるだけ新鮮な状態で切って串うちすることにつきるんです。
だから全自動焼き鳥マシーンがコンビニに導入されたら、革命が起きるわけですよ。コンビニの焼き鳥のレベルがめちゃくちゃ上がる。そうしたら、日本全国のコンビニにそのマシーン入りますからね。日本だけでなく世界中に売れますよ。

冨澤食は人間の生活において切り離せないから、当然ニーズも間違いなくある。
パリにバゲットの自販機があるんですよ。でも、日本で食べるバゲットとパリで食べるのとなんであんなにちがうのかな。僕、去年までフランスにいたんですけど。

堀江粉が違うんですよ。
いい粉で、全自動クロワッサン焼き機とか作ったらものすごい世界で広がりますよ。フードテックはすげぇ可能性あると思います。

冨澤そういう話も含めて、ロボットとかAIは今後、どんどん人類の生活の中に入り込んで来ます。これはもう確実に恐ろしいスピードで。
それに連れて、人間の仕事がとって代わられるのはもちろん、生き様や仕事観、遊び方なんかも変わるのは間違いない。

堀江そういう意味で言うと、僕はその変化を想像しているんじゃなくて、すでに実践しています。
HIU(堀江貴文イノベーション大学校)というオンラインサロンがまさにそうです。月に1万円を僕に払って、そこに集まる者同士で交流したりするんです。

例えば、30歳の女の子が未経験でアイアンレースで、日本代表になって、トライアスロンに出たり。資金はクラウドファウンディングです。
月1000円でも50人サポーターいれば支えられる。昔はパトロンは一人だったけど、それすらシェアリングエコノミーになってます。

冨澤そこで堀江さんは何するんですか?

堀江僕はモデレートをしているだけです。
僕が体験した面白い話を投げたり、ゲストを呼んでトークイベントをしたり。そこに面白い人を呼んだり。
それこそ「ロボット作ろう」「AI作ろう」っていうグループもいれば、ブドウを作ってたり、井戸を掘ってたり。いろんな人たちがいる。
つながりとか居場所があると、自然と仲間ができて壮大な暇つぶしができる。そういう場なんです。「遊んで暮そう」みたいな。

冨澤なるほど。メディアでも「どうなるんですか世の中」ってよく聞かれるんですが、どうなるのかわかってたら苦労しませんよ(笑)。と思いつつ、ある意味ローマ帝国とかに似てるのかなって思うんです。使用人が全部やってくれた時代。

堀江ああ、それはそうですよね。それによってアートとか哲学が生まれたわけですから。

冨澤そういう世界になる可能性もありますよね。
エンターテイメントとか芸術とかっていうのも、そういう時代にはぐっと花開くかもしれない。

冨澤とはいえ日本ってやっぱりまだ働く美徳とかそういうのあるじゃないですか?

堀江そういうのはとりあえず無視でね。そんな場合じゃないだろって思うんです。

だって、10年スパンで大量失業時代が必ずやってくる。みんな定年後のサラリーマンみたいになっちゃうからおそらく社会不安がおきる。
そうなることが僕には見えるけど、それでは困るのでオンラインサロンとかで啓蒙活動をしてるんです。
まだ世の中の人は見えていないけど、そのうちブレイクすると思いますよ。

冨澤いまだに取材とかだと、マスコミの8~9割がロボットが襲ってくるとか、ロボットに仕事を奪われるとかって話がでますけど。

堀江ネガティブな見方をしてしまったら実際にそうだからしょうがない。
これから企業のホワイトカラーの人でエクセルとかで資料とか作っているような人はほとんどいらなくなるんじゃないですか?ぶっちゃけ。

冨澤それはそうかもしれません。ほとんどいらなくなる。
ただ我々は、そこの進化を止めるわけにはいかないと思ってます。我々がやらなくても誰かがやるし。
だからこそ「人とロボットの共存」「ロボット革命で人々を幸せにする」ということを会社のビジョンとして掲げてます。

堀江ロボットのリスクとか言っていてもしょうがないですね。

冨澤先ほど言った掃除ロボット、「Whiz」(ウィズ)って言うんですけど、まさにわかりやすくて。人から仕事を奪うんじゃなくて、人と一緒にがんばるからWhiz。
新しいものにはリスクもあるけど、取り除くためには色々トライしてみないとなんもわからない。あーだこーだ議論してる間に、誰かがどんどんやっちゃうわけですからね。リスクを恐れていてはどうしようもないという点で、私も堀江さんも同じ考え方をしている。
それをぜひ啓蒙していきたいですね。

今日はありがとうございました!

※この記事は、対談内容をもとに加筆・編集したものです。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)氏

1972年、福岡県生まれ。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。
現在は宇宙ロケット開発や、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュース、また予防医療普及協会としても活動するなど幅広い活躍をみせる。
有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」の読者は1万数千人の規模に。
2014年8月には会員制のコミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校」(http://salon.horiemon.com/)をスタートした。
近著に『捨て本』『ハッタリの流儀』など
Twitterアカウント:@takapon_jp
その他、詳細は HORIEMON.COMへ。

冨澤文秀(とみざわ・ふみひで)

1997年NTTに入社。
2000年にソフトバンクグループに転じたのち、SOHO向けブロードバンド(BB)サービス、プリペイド携帯や副商材の事業責任者を務め、太陽光発電や買収したウィルコム、イーモバイルの新規事業も多数経験。
2011年からソフトバンクモバイルのロボット事業(現在のソフトバンクロボティクス)をリードし、2014年8月ソフトバンクロボティクス設立以来、代表取締役社長を務める。

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