Pick
Up
New
考え、議論するフォーラム / コラム

Pepperに寿命設定!?ユニークなアイデアがたくさん!
「みんなで実際につくるプロジェクト」ワークショップを開催しました

昨年12月17日に、Pepper アトリエ秋葉原で、「みんなで実際につくるプロジェクト」ワークショップが行われ、16名の方にご参加いただきました。Facebookでもアイデア募集してた「教育」「コミュニケーション」という2つのテーマで、それぞれグループに分かれて熱く議論をおこない、アイデアを交換し合いました。そしてこのワークショップから生まれたたくさんのご意見やアイデアたちは、実際にPepperのロボアプリとしてソフトバンクロボティクスで開発検討が進められています。
今回は、このワークショップでどんなアイデアが生まれたのか、ワークショップのレポートとともにご紹介します。

日常の疑問や解決したい課題から、発明が生まれる

ワークショップは、ゲストとしてお迎えした発明家・デザイナーの高橋鴻介さんのお話からスタート。今まで、高橋さんがどんなことからアイデアを閃いたり、どんなものを発明してきたのかをご紹介いただきました。1つ目に紹介されたのは、「Braille Neue(ブレイルノイエ)」と名付けられた新しい点字。点字が読めない人にも読める点字です。

これは、「なんで自分には点字が読めないのだろう?目が見えない人も見える人も同じように読めるようにできないか」といった思いが始まりだったそう。着眼点から新しいものが生まれていく、非常に興味深いプロセスでした。

続いて、ご紹介いただいたのは、忍者型ボディシェアリングロボット「NIN_NIN」。

NIN_NINは忍者の姿をした肩に乗せるロボットで、体の機能をシェアする「ボディシェアリング」という新しい概念から生まれたロボットです。例えば、視覚障害者の人がNIN_NINを肩に乗せて起動すると、遠隔でパソコンなどを経由して「目をシェアしてもいいよ」という人がNIN_NINにつながり、周囲の画像をその人にリアルタイムで送ることができるようになります。こうして、視覚障害者に代わって周囲を見ることで、例えば信号に差しかかった時はNIN_NINを介して「信号が青になりましたよ」と声をかけ、誘導するという仕組みです。視覚に障害を抱える方が、今でも毎日勘と勇気で横断歩道を渡っているという事実を高橋さんが知った時、もっと安心して日常を過ごすことができないか、という思いから生まれた発想だそうです。

このように、日常で感じた疑問や課題を深掘りすることで、高橋さんはたくさんの発明をされてきたとのこと。そして、今回のワークショップのテーマである「教育」「コミュニケーション」における日常で感じた課題から考えてみましょう…というところからワークショップが始まりました。

「教育」「コミュニケーション」において、ロボットで解決したい日常のこと

「教育」をテーマに2チーム(Aチーム・Bチーム)、「コミュニケーション」をテーマに2チーム(Cチーム・Dチーム)の4つのチームに分かれて、ロボットで解決したいことをまずは書き出し、そこで出た課題からどんなことを「ロボットで」解決したいのかをグループごとに意見を交わしながら考えていただきました。

「教育」チームの議論では、「感情」や「間」、「空気」といったキーワードがあがりました。Aチームは、あがった課題を「親」「子」どちらの課題を解決するものなのか、「心」と「身体的」どちらの教育なのかで分類。そして議論の結果、「親と子の間をつなげる「心」の教育」をテーマとしてさらに深めていくことになりました。Bチームはあがった課題を「言語」なのか「道徳」なのかで分類し、「関係性を築く道徳」をテーマにおきました。どちらのチームにも共通していたのは、人と人との関係を築く心理的な教育という点で、個人のスキル向上などではなく人同士の繋がりにフォーカスを当てていた点が印象的でした。

「コミュニケーション」のチームの議論では、「ニュアンスを伝える橋渡し」「空気を読む」「会話を発展させる」といったキーワードがあがっていました。Cチームは、課題を「非言語」「言語」のコミュニケーションに分類し、ニュアンスを伝えたり、気まずい空気をなくすといった、「非言語」なコミュニケーションをテーマとしておきました。またDチームでは「空気や間」や「言いづらいことの代弁」、外国語や方言などの「通訳」といった課題があがりました。そこから絞り込んでいく中で、想定されるシーンを「会議」と定め、「空気や間」「代弁」等をテーマにおき議論を深めていきました。コミュニケーションのチームはどちらも「人と人の間に立ってなにかをして欲しい」という意見が多く、ロボットに人間関係の潤滑油のような役割を期待していることが特徴的でした。

4つのチームそれぞれで議論を進めていましたが、どのチームの議論も「ロボット↔人」の1対1の関係ではなく、「人↔ロボット↔人」といった人同士のコミュニケーションを潤滑にしたりする関係に行き着いていたことが、不思議とどのチームにも共通して見えた気がしました。

熱論を通じた、それぞれのチームのアイデアを発表

非常に熱い議論がすべてのチームで行われていたため、時間は正直足りないくらいでしたが、それでも各チームが発表したアイディアはどれもが日常の課題と結びついた、ロボットでの解決の可能性を感じさせるものばかりでした。

Aチームは、「感情を読み取って親と子のパイプ役になってくれる。ぬくもりを感じられるPepper」をテーマにアイディアをまとめました。Pepperのような人型ロボットには、スマートフォンのアプリでもすでに実現できているような縄跳びや漢字の読み書きなどといった身体的な学習ではなく、もっとぬくもりを感じられるような教育ができたら良い、というところから考えられました。そして生まれたのが「親子ケンカしたときのパイプ役Pepper」というアイディア。

親子ってケンカすると、なかなかどちらも素直になれなかったりするもの。そんな時に、Pepperが介入してお互いの感情を読み取り、怒り具合を代弁し、なだめてくれる。昔は、おじいちゃんやおばあちゃんが一緒に住んでいて親子の間をとりもってくれたものですが、核家族化が進んだ現代ではなかなかそうはいかない、Pepperにはそんなおじいちゃんおばあちゃんのような役割を果たして欲しいといった意見に思わず私たちもなるほどなぁ…と頷かされました。

Bチームのアイデアは、敢えて老化しないロボットであるPepperに寿命を設けて命の大切さを学ぶ、その名も「Pepper無常版」。機能ではなく、Pepperの存在の概念に切り込む斬新なアイデアでした。Pepperにも人と同じように寿命や個性をもたせ、関係を築くことで、人の命の大切さを学ぶことができるのでは、ということです。ペットから命の大切さを学ぶといったことがあるかと思いますが、機械であるロボットが逆に有限の存在となることで、命位の尊さだけでなく物の大切さというものも今とは違った形で学べるようになるかもしれないな…と感じました。

Cチームのアイデアは、空気を読んで、会話の流れを変えてくれるPepper。表情と感情の組み合わせのデータをパターン化し、コミュニケーションの能力が高い人の空気の読み方を学習させ、相手の感情を読み取り、話題を切り替えたりして流れを変えてくれるというもの。Pepperの特長である「感情」を役立たせるアイデアでした。

最後はDチーム。Dチームのアイデアは逆に会議の空気を「壊す」ファシリテーションPepper。社内の会議で議論が行き詰まった時などに合いの手をいれたり、応援することで、良い意味で空気を壊し、会議を円滑に進めるきっかけを作ってくれるというもの。「◯◯さん、今日はX回目の発言ですね。冴えてますね〜」「よ!新人がんばれ!」など、人間だとつい空気を読んでしまい発言できないようなタイミングでPepperが発言してくれることで、空気が和むのではないかと考えました。

また、2台のPepperを活用し、片方は真面目に会議を進行するPepper、もう片方はおちゃらけPepperというように、別のキャラクターがあることでメリハリが生まれるのではないかといった、ロボットならではのユニークなアイデアもあがりました。会議というビジネスの場だけでなく、家族の団らんの場でも活用できそうですね。

みなさんのアイデアをもとに、実際にPepperのアプリをつくります!

今回、初めて開催された「あさってロボット会議 プロジェクトワークショップ」。とても活発な議論が交わされて、2時間半という短い時間でしたが、具体的でおもしろいアイデアがたくさん生まれ、我々あさってロボット会議編集部も大変驚きました。解決する課題は日々の生活の中で起こるちょっとしたことかもしれませんが、それをリアルに考えてみることでロボットだからこそできることが見えてくることを感じました。そしてそれこそがロボットの未来を発展させる一歩になることを、このワークショップを通じて再確認できたように思います。もちろん、議論しておしまいではなく、実際に今回出たアイデアをもとにまずは作って試してみよう、というのがこのワークショップの一番大事なところなので、さらに編集部内でも議論を続け、現在Pepperのロボアプリのプロトタイプを鋭意制作中です。さてさて、どんなアプリができあがるのか…まもなく発表できそうなので、楽しみにもう少しだけお待ちください。そこからまた、新たな視点が生まれてくることを期待したいと思います!

オススメ記事