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考え、議論するフォーラム / コラム

清掃用ロボットと人が「相棒」になれる瞬間って?

モビリティ事業推進部 小暮武男

パートナーになり得る条件

 家庭用の清掃ロボットとして、1997年のルンバの試作機の誕生以降、2004年には日本での販売を開始、2017年9月には世界累計販売台数が2000万台を超えたと言われるほど、掃除ロボットは家庭にはかなり受け入れられてきているように思えます。それでは、業務用清掃ロボットはどうだろうか?と考えると、かれこれ15年以上にもわたって、様々な取組みが行われていますが、試行運用をクリアし実際の業務で運用されているケースは非常に少ないと感じています。

 家庭用の伸長に対し、なぜ業務用の清掃ロボットは運用に根付かなかったのか? なぜ人に受け入れられ、パートナーシップを築く存在に成り得なかったのだろうか? もちろん大前提として導入の際のコストや高い安全性の確保という課題が出てきますが、決してそれだけが理由ではないと感じます。
 業務用の清掃機が活用される商業施設や駅のコンコース、そしてオフィスなどのビジネス空間における掃除エリアは家庭と比べて圧倒的に広いにもかかわらず、その広大なスペースを掃除する時間は、営業時間を終えてから翌日の業務開始準備を始めるまでと本当に限られた数時間だけ。この非常に厳しい前提条件の中、期待通りのクオリティを担保できるかが、清掃ロボットを業務のパートナーとして受け入れるために必要な要素になります。加えて実際に使用するユーザーはロボットエンジニアでもなく、ロボットには決して詳しくはない清掃員の方々なので、実使用を考えるにあたってこれはなかなか難しい課題です。ボタン一つとは言わないまでも、誰でも簡単に操作ができるユーザービリティが求められていると言えるでしょう。

 こうした状況にさらに追い打ちをかけるように、清掃する環境は当然のことながら都度変化をしていきます。商業施設では、季節によって商品の展示レイアウトが変わったり、特設コーナーができたりしますし、オフィスでは、昨日までなかったものがある日突然置かれることもあります。そしてオペレーション上、担当する清掃員の方が変わる可能性は常にありますから、こうした不確定要素の変化が起こるたびにロボットメーカーによる現地でのサポートやトレーニングが必要となることが一般的であり、試行運用をクリアして幅広い地域で実稼働させることが実現できているとは言いがたかった、というのが業務用清掃ロボットを取り巻く環境であったと言えるでしょう。

清掃員同士でも教え合える容易さ、そして操作性。毎日同じ場所を同じように、同じ品質で遂行してくれる安定感。高望みし過ぎかもしれませんが、これらが業務用清掃機をパートナーとして迎える際に求める条件と言えるのかもしれません。

取って代わるではなく共存、協働

 こうしたハードルを乗り越えて素晴らしいパートナーとなるようなロボットと出会えたとしても、清掃員との共存のあり方の検討や協働作業の設計は必ず必要となります。例えば、清掃用ロボットの施設内の移送や日々のメンテナンス、そしてどうしたって設定は人が行う必要がありあます。また、人が行うほうが効率が良い清掃エリアと清掃用ロボットが得意とする清掃エリアはそれぞれ異なる形で存在するので、人とロボットを組み合わせてどのように最適なフローを構築するのかを考える必要もあります。実はこの検討こそ、協働を実現するのにあたって一番のポイントになると考えています。

 先日、ソフトバンクロボティクスが2018年8月より販売を開始した清掃用ロボット 「AI清掃PRO RS26 powered by BrainOS」を実運用頂いている現場を視察した際、まさに人と清掃用ロボットの協働作業を見ることができました。

私「いまロボットはどの辺にいますか?」
清掃員の方「あぁ、アイツはあのあたりだと思いますよ」

と、ご高齢の男性清掃員の方が遠くを指さしてくださいました。夜間照明による薄暗く広大な商業施設で、確かに指差す場所にはロボットが清掃をしていました。その後、一つのルートの清掃を終えたロボットが停止し次の指示を待つ状態で待機をしていると、1分もしないうちに同じ清掃員の方がどこからともなく現れ、次のルートの清掃に向けてわずか30秒程度の時間でロボットを再スタートさせていきました。そして清掃員の方は、ロボットが清掃できない狭い場所の清掃に自然な足取りで向かって行きました。

 「RS26 powered by BrainOS」はPepperのように感情を持ったロボットではありませんが、人とロボットがそれぞれの得意なパートを短い時間の中で分担している姿を見て、「人と一緒にがんばって掃除しているな」と感じた印象とともに、ひとつのパートナーの形を見たような、そんな印象を受けました。清掃員の方の「アイツ」という呼び方にもこのロボットを相棒として受け入れているような感じがして、思わず愛情を感じずにはいられなかったことも最後に記しておきたいと思います。

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