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考え、議論するフォーラム / コラム

ロボットビジネス今後の見通し

Brain社およびボストンダイナミクス社との共同プロジェクトのプロジェクトリーダー 唐津慎一朗

ロボットビジネスにおける日本の土壌

近年様々な形で議論が進んでいるロボットビジネスにおいて、実に日本は非常に特殊な環境だと考えています。

まず、ロボットビジネスを後押しする側面として、日本が抱えている少子化・高齢化などの課題の影響を受け、労働力がかなり不足していることが挙げられます。例えば建築、警備、清掃など、特定の業界においては、事業の継続に影響があるほどであり、構造的課題であるため改善を見込むのは難しい状況です。外国人労働者の受け入れを拡大する話もでていますが、アジア、特に中国の賃金が急速に上昇している状況で、期待するような解決策となる労働力が集まるのか疑問も残ります。ここにロボット導入のチャンスがあると私は見ています。切迫した現場の一縷の望み、とまではいきませんが、諸外国で見られるような「ロボットに仕事を奪われる」というようなイメージよりも、根源的な課題解決の具体的・友好的な方法として、好意的に提案を受け止めて頂いているように感じています。

また日本のロボットビジネスの背景を特徴付ける環境として、サービスレベルの高さが挙げられます。日本人は職業倫理感が極めて高く、パートタイムやアルバイトの方でも非常に高いクオリティで仕事をこなします。昨年、ロボット洗浄機のローンチに先駆けて、自動走行技術を持つ米国Brain社の開発メンバーを連れて、日本の駅やショッピングモールの清掃現場を見学させて頂く機会がありました。Brainのメンバーがとにかく驚いていたのは、清掃員の皆さんが非常に細かいところまで丁寧に仕事を、しかもキビキビと進めていく点です。

「日本人はまじめだ」とよく言われるようなエピソードではありますが、実はこれがロボットビジネスにおいては少々ネガティブに働いていると感じています。

例えば、弊社が2018年の夏に発売したRS26という床洗浄ロボットに対するお客様の反応です。すでに多くのお客様にご活用頂いておりますが、一方で、導入に踏み切れないという清掃会社様も数多くいらっしゃいました。導入・活用されたお客様と、踏み切らなかったお客様にはどのような違いがあったのか、それは、
「人間と完璧に同じように仕事ができるわけではないロボットをどう活用するか」
という点で、判断に違いがあったことだと思います。

ロボットに何を求めるか

先に申し上げた通り、日本の清掃現場では、日々非常に高いクオリティで掃除が行われています。この品質をロボットで完全に再現できるのか、というと、そういうわけではありません。未導入のお客様は「ロボットができない作業」を細かく確認されていたのに対して、いち早くロボット掃除機を活用されているお客様は「ロボットでも十分なクオリティが出せる作業」と「経験あるスタッフが対応すべき作業」を組み合わせることにより、清掃品質を確保されているように感じます。

これまでの弊社の経験から、ロボットビジネスが今後拡大していくにあたって、ロボットができることを正しく理解いただく「利用者の期待値コントロール」と、人とロボットを上手に役割分担させる「ロボット導入時のオペレーション組み立て」が非常に重要なポイントであると考えています。

人と全く同じ作業ができるロボットを開発することができれば、それは社会課題解決の観点からも非常に素晴らしいことですが、現時点では技術的に解決すべき課題はまだまだ多くあるように感じます。当面は人間と全く同じものを目指すというよりも、「人間と同等のクオリティでロボットが実行可能な作業」という観点で、ロボットを活用したビジネスを考えることがポイントになるのではないでしょうか。