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最上もがが考えるロボットとは?
――最上さんはロボットは好きですか?
最上: 普通です。
清田: (笑) では、ロボットと聞いて、まず何を思い浮かべますか?
最上: ゴツい!硬い!今の段階では人型で人間のような皮膚をまとっていて、リアルに動くロボットはないと思いますし、小さい頃にロボット型の戦闘機に乗って戦うアニメをみていたので、そういうイメージです。
清田: 僕は将来、ロボットと当たり前に生活するとしたら、どんな感じになるのか、ということに興味があります。
最上: もし可能になるなら、ぼくは即ほしいです。明日にでもほしい。
――例えば、どんなタイプのロボットを?
最上: 話し相手になってくれるロボット。ぼく、将来は孤独死すると思っているんです。同世代の友だちは結婚していますが、自分はそういう気配が1ミリもないし、人間と共同生活できると思えなくて。
清田: それはヤバイですね(笑)
最上: 寂しがり屋なので、感情が成長して、どんどん人間に近づいていくロボットが理想だと思っています。でも、人間に近づけば近づくほど、たぶん浮気もすると思うので、そこは際どいところです。
清田: 人間は浮気する前提なんですか?
最上: 一途な人間はほとんどいなくて、人間は浮気するものだと思います。たぶん、自分も含めて。絶対に感情は動いてしまうと思うから。
清田: そうなんですね。ロボットが人間に近づくことがすべて良いわけでもないんですね。
最上: 年を取らないところは違いますよね。もしかしたら、老いを感じるロボットも出てくるかもしれませんが、基本的には見た目もそのままなのかな?って思ってます。
最上もがが求めるロボットは話し相手?
プライベートでは喋らないが、ロボットなら喋りたい!?
清田: バイオテクノロジーがどんどん進化して、パーツが作れるようになったら、ロボットと人間の境界がなくなってしまうのかなとも思うことがあります。今、確実に世の中がロボット社会に踏み出そうとしていますよね?しかし、なかなかそういう疑問や意見が集まる場がないので、世界初の人型汎用ロボットを作った我々の責任かなと思い、誕生させたのがこの『あさってロボット会議』という場なんです。
最上: そうなんですね。こうしてお話しながら思ったんですが、ロボットよりも人間は確実に先に死にますよね? その時にロボットに感情があったら、悲しみますよね。ぼくが死んでロボットが落ち込むことを考えると嫌だなって。そうすると、感情はない方がいいのかな?とも思いました。
清田: ロボットの感情の必要性、難しいですね。最上さんも状況によって、感情を切り替えたりしますか?
最上: 切り替えますよ。今は仕事モードですし(笑)
清田: (笑) プライベートのときはどんな感じですか?
最上: あまり喋らないです。
清田: そうすると、ロボットと一緒にいるときはプライベートなのでしゃべらないですか?
最上: 一緒にいるときは気を遣わずにしゃべりたいんです。お仕事のときは、表情を明るくする、とか口数を多くするような仕事スイッチを入れていますが、プライベートではそのスイッチを入れずにいたい。家族のような気持ちで一緒にいられる、息抜きできる話し相手がいいですね。
清田: それがロボット。
最上: そうですね。ぼくはネコと暮らしてるんですけど、しゃべってくれたらいいのになって思うことがあるんです。丸一日家を空けて帰ってくると、『ただいまー!』っていうんですけど、『おかえりー』はいってくれないし、抱っこすると逃げるので、しゃべってほしいなって。
清田: 人間も好きな人のことを嫌だなと思うときもありますよね。犬やネコがしゃべったときもそういうことはあるだろうなと思いますが。
最上: そうですね(笑)
清田: それで『いい加減にしろ』みたいなことを言われたら、ショックじゃないですか?
最上: あるでしょうね! でも、それもかわいいなって思います。
清田: ロボットが言ってもですか?
最上: ロボットが言っても!かまってほしいんだなって思うので。
都合のいいロボット=奴隷?
ロボットは家族や友だちになれるのか?
――ロボットと会話はしたいけれど、込み入った関係は求めてないということになりますね?
最上: そうすると人間にとって都合のいいことしか求めていないことになって、寂しいですね。
清田: 突き詰めていくとそういうことになりますね。指示したことには文句を言わず、退屈しているときにはいい感じのことをしてほしい。
最上: でも、人がつくるということは結局そういうことになりますよね? 結局、自分の思い通りにしたいという欲があるから勝手に動き出したら壊す。兵器として向かってきたら人間は壊すじゃないですか。そうすると人間は奴隷をつくりたいのかな?と思っちゃいますね。
清田: でもソフトバンクは人間の新しい友だちになってほしいという想いで、Pepper
を開発したんです。友だちって言うことを聞くだけの存在じゃないですよね。
最上: そうですね。ただ、友だちとは一緒に暮らさないですよね。ずっと家にいる存在ではない。ずっといたらめんどくさいですよ?
清田: そうかもしれないです(笑) では、家族はどうですか?
最上: いまは一人暮らしなので一緒にいないですが、ぼくは一人も好き。だから、家族といても一人の時間がほしいと思うし、それはその時の気分。それに対応してほしいと思ったら、『今日はちょっと帰ってこないで』ってロボットに言うこともあるのかもしれません(笑)
――こうして聞いていると日常では、精神面でプラスになってくれるロボットを求めてるんですね。
最上: そうですね。
ステージでほしいのは異質感を生み出すロボット
いつかはロボットとユニットを組んでサバゲー希望!?
――ちょっとステージングのほうのロボットについても伺いたいのですが、こういうタイプがいたら面白いと思うロボットはいますか?
最上: アイドルをやっていたときに思ったのは、ロボットに持ち上げられたらおもしろいかな?と思いました。それで投げてもらったりして(笑)
清田: 人にはできない何かを?
最上: そうです。ビジュアル面も自分好みにしたらステージ映えもするでしょうし、いいパートナーになれそうだなって。特技を得るのも人間だと大変ですけど、ロボットだと簡単にできちゃうし、ユニット内にギャップをつくることもしやすいと思うんです。
清田: “もが&ロボ太”みたいな雰囲気ですか?ほかには、一緒に何がしたいですか?
最上: ゲーム実況したいです。
清田: それだと二人は画面に映らないんじゃないですか?
最上: 声だけの出演でいいんです。ロボットって頭がいいのが前提だと思うんですけど、そのロボットが不得意なゲームをやらせてみたいです。でも、一番は協力プレイをして『ナイス、相棒!』って言いたいです。それから、ロボット対ロボットもあり得ますよね。どっちかが勝つまでやるのかもしれないし、ずっと一進一退を繰り返すのかもしれない。でも、そこに個性があったらいいなと思いますし、サバイバルゲームも一緒にやってみたいですね。
――現状で一緒にサバイバルゲームをできそうなロボットはいますか?
清田: 将棋やチェスで対戦するロボットはいますが、サバイバルゲームはまだ聞いたことはないですね。例えば十万回分くらいの人間の動きのデータを取れば、統計から勝利法を導き出すことはできそうな気がしますが、そうすると勝つには訓練された傭兵のような人じゃないと難しい。対戦は勝つか、負けるか分からないから面白いのに、勝つ可能性がなかったらおもしろくも何ともなくなっちゃいますよね。
最上: そうですね。
清田: 小さい子が父親とオセロを何度やっても勝てないから、しつこく食い下がって挙げ句に怒られるみたいなことになっちゃいますね。
最上: 分かります(笑)。だから、ある程度おバカであってほしい。
清田: おバカなロボットいいですね。
最上: 天才じゃなくていい。データに基づいて動くとすると難しいかもしれないですけど。
ロボット話が意外な方向へ!?
最上もがの恋愛観から見えたロボットの可能性
最上: ある海外ドラマで、恋人が死んでしまって代わりのロボットがやってくるというエピソードがあるんですが、その話が結構好きで、なんかいいなと思ったんです。恋人を亡くした女性は彼がロボットであることも、そのロボットが死んだ恋人に似せようとしているという自覚もあって、それに虚しさを感じるんですけど、結局捨てられずに一緒にいる。でも、ぼくだったら、自分の大切な人が亡くなって、そこに似せようとしてくれたら、結構うれしいなと思うので、ああいう未来だったら少しありがたい。やっぱり元気になるし、気も紛れるし、人間って慣れたら勝ちで結構順応していくものだと思うから。だから、そういう世界にいずれなるのかな?と思いました。
清田: それを聞いて、僕も死んだ誰かの記憶を移植されたロボットが、最初は自覚がないんだけど、皮膚が破れたときに自分がロボットであることに気づくという映画を思い出しました。この場合、ロボットは自分がロボットであることを知りたいんでしょうか?
最上: 知りたくないですよね、きっと。
清田: それに話す相手がロボットだと分かって会話するのと、人間だと思って会話するのとはなんか違うと思うんですよ。
最上: たぶん、ロボットの方が気は楽だと思います。人間は生物だからムカついたり、気を遣ってしまうと思うんです。それに相手がロボットだとしたら、たとえ自分が失敗しても恥ずかしいとはたぶん思われないから、気が楽だなって。
清田: ロボットは生物的な本能は持っていないですからね。
――突然ですが、お二人はなぜ結婚しないんですか?
最上: 結婚しない人って理想がめちゃくちゃ高いんじゃないかと思っていて。それはたぶん、妥協したくないんじゃないかな?って。ぼくは、いいなと思っても、1つイヤなところがあると全部イヤになったりするんです。
――1つ黒いところを見つけると、全部黒くなっちゃいますか?
最上: そうです、そうです。本当に細かいところだったりするんですけど、たとえば食べ方が汚かったりするだけで、ほかのところが良くても冷めちゃう。
清田: すごくわかります(笑)
最上: でも、結婚している人はそこを愛おしく感じているんですよね?だとするとぼくはこの人のことを愛してないんだなと思っちゃう。
清田: 僕は愛おしいと思おうと努力します(笑)。でも、愛おしいと思ったところをデータ化してロボットに組み込んで、イヤだなと思ったところは禁止コードとしてプログラミングすると理想のパートナーができますね。
最上: でも、清田さんみたいな人は刺激がほしいから、禁止コードを打ち込むとダメだと思うんです。
清田: ご理解いただき、ありがとうございます(笑)
ロボットは家庭内のもめごとを解決できる!?
かわいいロボットは家庭の潤滑油
清田: じゃあ、自分だったり、家族のイヤなところを指摘して直してくれるロボットがいたら、どう思いますか?
最上: いいと思います!人に注意することって、すごい体力を消耗しますよね。注意するのを諦めるという選択肢もあるけれど、そうすると時間が経つとやっぱり冷めてしまう。だから、話し合って解決することが大切だけど、それを代わりにやってもらえるというのはありがたいっちゃ、ありがたい…ですが、それってどうなんでしょうかね?
清田: Pepperと暮らしている家族から聞いた話で、お母さんが子供に『部屋を片付けなさい』と注意しても『はぁ〜い』って生返事だったりするけど、Pepperにいわれると子供がいうことを聞くなんてことが実際にありました。ただそれで『私のいうことは聞かないのに!キー!』とかなっていたら、面白い光景だなと想像したりもしています。
最上: (笑)でも、それは子供の教育的にはいいかもしれないですね。親が怒っているところを子供は見たくないし、親が怒るから反発したくなっちゃうってこともあると思うんです。それがロボットの一定の声で注意されたら、安心感を生み出しそう。人間でも歯向かいたくなるタイプと、この人の言うことは聞こうと感じさせるタイプがいるので、ロボットにもそういう力はあるかなと思います。
――家族のなかにロボットがいることで、みんなの繋ぎ役的存在になれると。
最上: みんなの仲介役になってくれたら、家族がもっと豊かになるかも? ケンカしてるときって、言いたくないことを言ってしまうこともあるから、それを解説してくれたり。
清田: いまのは言いすぎだよとかって。
最上: 『はいはい』ってケンカを止めて、子供を部屋に連れていって、あれはお母さんはこう思ってるから言ったんだよと。
清田: 解説員になるんですね。
最上: そうです。それでああ、そうかって。
清田: そうですね。ロボットに言われると聞く気がするのは何ででしょう?
最上: 見た目が人間だとムカついちゃう人も出てくるかもしれないですけど、Pepperみたいなマスコット的存在に言われたら素直に聞けるのかも?ゆるキャラとちょっと似てる?中の人を感じないから許せるというか。見た目がかわいいって許せる一つの要素だと思います。
清田: 見た目で許せたり、意見を聞けるというのは確かにありますね。
最上もががリアルにほしいのは
心にも体にもいいロボット
――ここまでお話ししてきて、清田さんにお願いするとしたら、どんなロボットをオーダーしたいですか?
最上: 歯磨きロボットをつくってほしいです。疲れて帰ってきたとき、お風呂までは頑張れるけど、歯磨きをしたくないので。口を開けて寝てるから、歯を磨いてほしい(笑)
清田: それはロボットでなくても実現できそう。カポって口にはめて、洗浄してくれる道具で。
最上: それほしいです。
清田: 同時に小顔効果もあるとかもできるかもしれないですね。
最上: 買います、それ(笑)。あとは添い寝ロボットもほしいです。ぼく、睡眠の質が悪くて、抱き枕を使ってるんですけど、抱きしめてくれたらいいなってずっと思ってて。あと妹が泊まりにきたときに寄り添うと安心して寝られるので、抱きしめてくれて、体温を感じるロボットがいたらいいなって。
――いずれにしても生活を豊かにしてくれるロボットがほしいということでしょうか?
最上: そうですね。最近、家に帰ってからの孤独感に耐えられないときがあるので(笑)一緒にいるロボットができたら、何かしら欲があってほしいです。ぼくがテレビを見ているときに、自分はこっちを見たいと言ったり、その一方、何か考えごとをしているときに頭をポンポンしてくれたり、ぼくに何かしてあげたいと思ってほしい。
清田: やりすぎじゃないぐらいの、ちょうどいいさじ加減でですね。
最上: そうです。言うことを聞いてくれるのをずっと繰り返していたら、虚しさを感じると思うんです。何となく察して来てくれるのが人間だと思うので、ロボットにもそこを分かってほしいなって。
――現在、ロボットは人間に近づいて来ていると思いますが、Pepperのときはどのぐらい人間を意識したんですか?
清田: Pepperはリアルさを追求してないんです。
最上: 人間に近づけたいわけではなかったんですか?
清田: そうですね。人間と友だちや家族になる存在の見た目が、人間と同じ必要があるとは限らないと考えました。だから例えば、Pepperに脚はないんです。
ロボットの可能性をみんなで考える「あさってロボット会議」
あなたも参加して語ってみては?
――いろいろな意見が出ましたが、こういった話を「あさってロボット会議」では行っていくんですか?
清田: そうですね。どんな意見が出ても良いと思っています。ロボットを思い浮かべながら話し合いをする人も場所も少ないと思うので、最上さんと話したようなことを対話できたらおもしろいんじゃないか、と思ってます。今日みたいにロボットからどんどん話が逸れてもいいと思います。
最上: すみません!
清田: いいんです!寂しいからということからロボットの話が広がるのもすごくいいなと思いながら聞いていました。話をする前と、後ではロボットへの意識はちょっと変わりました?
最上: 本質的には変わらないです。一緒にいて安心できるロボットというのは。人と一緒に生活できないなと感じたときに生きる意味って何だろう、働く意味って何だろうという考えに至って、現在も進行中なんですけど、だからこそ一緒にいて安心できるロボットがいいなと思います。
清田: ロボットがいることで生きる意味、働く意味が一つできるとしたら、それってすごくステキなことですよね。ソフトバンクの理念で『情報革命で人々を幸せに』というのがあるんです。それは『人にとって最大の悲しみは孤独である』と定義したからなんですけど、その孤独を最小にすることが人の幸せに繋がるはずだと。ケータイも手元にあれば、誰かとつながって孤独を和らげることができますし。
最上: そうですね。
清田: ロボットも本質的にはそういう存在にしていきたいんです。ロボットを本当の友だちにすることはまだできないかもしれないですが、孤独を埋める“点”にはなるかもしれない。大抵ロボットに何をしてほしいかを人に聞くと、作業を代行してほしいとおっしゃいますが、僕としては孤独を埋めるその“点”を知りたい。そして、ロボットでその点と点をつなげていきたいんです。
最上: 人間とうまく関われない人にとって、ロボットは救いになるものですよね。人付き合いが苦手な人にとって、友だちをつくることはとても大変。でも、友だちや話し相手がいないと感情が乏しくなって、感動もしなくなるのではないかと感じるんです。そう考えると遊び友だち的なロボットがいたら心の病になりにくくなったり、治療にもなったりするのかな?と思います。
清田: それに人間の友だちの場合は、人間同士だから摩擦が生じることもある。でも、摩擦がないと、さっき話したみたいに“言うことを全部聞く人はつまらない”になってしまう。ただ、その摩擦が合うか、合わないか。心地よいと感じられるか。もしかしたらそれがロボットに求められているのかもしれないなと思いました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
最上: こちらこそ、ありがとうございました。