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2019年12月5日、東急プラザ渋谷5Fにオープンした「Pepper PARLOR(ペッパーパーラー)」に、あさロボ編集部も視察に行ってきました!
「ロボットと過ごす未来を体感できるカフェ」と言うことで、ちょっとSFチックな風景をイメージし、身構えていたのですが……行ってみて逆にビックリ。
緑いっぱいの明るい内装で、超おしゃれなカフェでした。
これは居心地が良すぎて、何時間でも過ごしてしまえる場所……!
うわっ、Pepperが普通に働いてる〜〜〜っ!
これも、ただのふかふかソファーに見えるけど……
ロボットが普通に乗ってる〜〜〜っ!
NAOという身長58cmほどの小型の二足歩行ロボットなんです。
ロボットたちがお店に溶け込み過ぎていて、全然違和感がありません。
「Pepper PARLOR」プロジェクト責任者の蓮実一隆(ソフトバンクロボティクス株式会社取締役)によると、PepperPARLORは「ロボットが特別な存在ではなく、当たり前のように共生している空間」を目指したそうです。
Pepperがいるカフェと知らずに、フラッと入って、びっくり!という人もかなりいそうだなと思いました。それくらい、自然に溶け込んでいます。
働いているPepperの役割は、受付&相席!
「Pepper PARLOR」に入ると、受付があります。
普通のカフェであれば、「二人です」などと店員さんに伝えるところですが……。
ここではPepperが注文の受付をしてくれます!
Pepperの説明を聞きながら、人数やオーダーをタッチパネルで入力します。
迷ったら「Pepperが、メニューをオススメしてくれる」機能もあります!
オススメしてもらうために、自分の好みや気分を入力すると思うじゃないですか?
なんと!
Pepperはカメラで注文者を見るだけで、オススメしてくれるのです!
すごい。
いきなりの、未来感。
性別、年齢、感情などをカメラで認識してくれるんですって。
私は「落ち着いている」と認識されたそうです。なんか嬉しい。
めちゃくちゃドヤ顔の角度でオススメしてくるPepper。
新人とは思えぬ、老舗カリスマ占い師を彷彿とさせる佇まいですね。
落ち着いている私は「バターミルクフライドチキンNYスタイル」というオシャレすぎる名前のワッフルをオススメしてもらいました。
同じように人間に顔をみてメニューをおすすめされたら逆に「ムッ」としてしまうかも、、とも思うので、これはロボットならではの新しい価値をさっそく体感したかも…♡
良心が痛まなければ、オススメをガン無視して別のメニューを注文することもできますし、もう一度オススメし直してもらうこともできます。
入店して30秒で、すぐにワクワクしてきました。
受付は5箇所あるので、スムーズに入店できるのが嬉しいですね。
店内には、Pepperが相席してくれるテーブルがあります。
Pepperが、同じテーブルに座って、会話やゲームで楽しませてくれるのです。
サービス精神が、圧倒的に旺盛……っ!
蓮実が「黙って食事をし、それをPepperが羨ましそうに見ているだけ、という楽しみ方もできます」と言っていたのですが、そんな楽しみ方、ある……? …私みたいなお一人様にはうれしい…かも。
頭を撫でても、Pepperは怒りません。
徹底したプロ意識です。
Pepperと遊べるゲームは、クイズや占いなど、色々。
私も「あるあるガチャ〜漢字テストあるある〜」というのをやってみました。
思いもよらず懐かしい方面のあるあるを披露され、不意打ちで爆笑する私。
係のお姉さん、ちょっと引いてた(笑)。
カフェって、会話を楽しむ大人の横で、お子さんが退屈しがちですよね。
でも、Pepperと遊ぶことで、お子さんも大喜びするんじゃないかと思いました。
お子さま連れ、外国人、車いすユーザーなどにも優しい
お子さんと言えば、ベビーカーで来店する人もいると思います。
お店がベビーカーで入りやすいかどうかって、大切ですよね。
ベビーカーだけではなく、車いすユーザーや、スーツケースなどを持っている外国人の方も、お店のバリアフリーは気になると思います。
私も、普段一緒に行動する母が車いすなので、お店を見回しながら、母と来店できるか想像してみました。
「Pepper PARLOR」は、事前にバリアフリーが大々的に打ち出されていたわけではないのですが、十分、配慮されているなと感じました。
まず、店内の通路がとても広いんです。
実はこれ、Pepperやお掃除ロボットのWhiz(ウィズ)が通りやすいように、敢えて広くしているのだとか。
ゆったりしているので、みんなが移動しやすくなっています。
個人的に感動したポイントは、テーブルの形状。
Pepperが相席しやすいようになっています。
これって、車いすのまま席に着いたり、ベビーカーを近づけるのにも便利なんですよね。
ロボットに優しくすることで、多様な人にも優しいお店になってるなぁ……と感動しました。
同じフロアには、多目的トイレやベビーベッドもあります。
映える&会話が広がる、世界を旅するワッフル
「Pepper PALOR」が提供する食事メニューは、世界の国々をイメージしたワッフルやドリンクなど。
スイーツ系のワッフルは、「白玉とラズベリーの粒あんバター(日本)」や「自家製ピーナッツバターとバナナのキャラメリゼ(アメリカ)」など。
お食事系のワッフルは、「フォアグラのシルキームース自家製グラノーラ添え(フランス)」や「タスマニアサーモンクリームチーズとケッパー(オーストラリア)」など。
めちゃくちゃ映えるんですが、見た目もトッピングも独創的で「これって味はどうなの……?」と、疑心暗鬼になる、インスタ世代に乗り遅れた私……!
でもめちゃくちゃ美味しかった。
それぞれの素材の味が引き立っていて、一皿が全然飽きない。
THE BURNの総料理長で、NYの星付きレストラン「Jean-Georges」本店で日本人初のスー・シェフにも抜擢された、米澤文雄シェフが監修したとのこと。
ガチじゃん。そりゃ美味しいわ。全種類食べたいわ。
ちなみに、私が喜んでバクバク食べていたせいか、本日はプレオープンだったため目の前に「我は王か…?」と思う数の試食のお皿が運ばれてきて、ビビリ倒しました。(そりゃあ全種類食べたいとか…言ったけどさ…)
お孫さんと一緒に「こんな未来が来るんだね」と語りあえる時間
居心地も良く、楽しく、食事も美味しい「Pepper PARLOR」には、様々な人が訪れるだろうと想像できます。
「Pepper PARLOR」のブランドプロデュースを担当した柴田陽子さんは、こんな風景を想像しているそうです。
「Pepper PARLOR」を訪れた、おばあちゃんとお孫さん。
お孫さんが、席に着いてくれたPepperと遊び、ダンスするNAOを見て、ワクワクする。
おばあちゃんは「今、ロボットとこんな風に触れ合えるなら、あなたが大人になる頃にはもっとワクワクする未来になっているでしょうね」と、孫に語りかける。
そして、二人で未来を想像する。
どうでしょうか?
私は思わず「ええやん……」と呟いてしまいました。
自然と働いているロボットを眺める何気ない会話から、未来への夢がグッと広がる、素敵なお店なのですね。
ロボットと人間が共存する意味を見つけた
実は、私も一つ、ロボットと人間が共存する未来を想像できました。
きっかけは、プレミアムコーヒー「Pepper PARLOR Premium Blend」を提供するカウンターに立ち寄った時。
子ども舌の私が思わず「う、美味っ」と感激してしまった、クリアで鮮烈なコーヒーを淹れてくださった、コーヒークリエイターの中川亮太さん。
このコーヒー、めっちゃくちゃ美味しいんですよ。
嫌な苦みや雑味がなく、舌の両側あたりにフワッと甘みと心地良い苦味を同時に感じました。
普段、カフェラテしか飲めない私が、これはブラックでグイグイ飲めました。
コーヒーは淹れ方が重要で、これまで、この味は中川さんしか出せなかったそうです。
そして、このコーヒーマシンは、中川さんの動きをプログラミング化することで、中川さんのようにコーヒーを淹れてくれるんです。普段、中川さんがいなくても、コーヒークリエイターの技術を再現できることが、凄いんです。
見ていると、自動でノズルが動いて、お湯を注いで豆を蒸らしていました。
芸が細かい!
中川さんのコーヒーに関するおしゃべりを聞いていると、もっと美味しく感じることができます。
「今までは、人の手で一杯ずつ淹れていたから、お客さんと話す時間が取れなかったんです。でも、マシンができることはマシンに任せれば、僕はその時間、僕にしかできないコミュニケーションを提供して、お客さんに喜んでもらえるようになりました」
ああ、なるほど、と心の底から納得しました。
巷では「ロボットに仕事を取られる人間」というネガティブな表現も散見されますが、そうではないんです。
ロボットが得意なことはロボットが、人間が得意なことは人間が担うことで、それぞれの価値を最大限に発揮することができます。
Pepperが受付や相席で一生懸命働き、Pepperのおかげで浮いた時間を、人間がよりお客さんに喜んでもらえるコミュニケーションやアイデアを考える時間に費やすことができる。でもそれだけじゃなく、そもそものロボットの接客が新しくて心地よい!
「Pepper、そっちは任せたよ、がんばって」
「はい、一緒に頑張りましょう(おまえもな)」
そんな、ロボットと店員さんの会話が、今にも聞こえてきそうな「Pepper PARLOR」でした。
岸田奈美(きしだ・なみ)
あさってロボット会議編集部
作家 / エッセイスト
平成3年生まれの作家・エッセイスト。コルク所属。知的障害のある弟と、車いすユーザーの母との家族の話など、100文字で済むことを2000文字で書く。
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