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ロボットは人を魅了できるのか?
村林: ロボットは機械としての性能を求められ、コスト削減を目的にいかに業務効率できるのかという視点で評価されるケースがほとんどです。ロボット事業者である弊社もロボットを普及させる上ではその期待に応えなければならないのは当然です。
一方でロボットの持つ身体性や美しいデザイン性から、ロボットで人を魅せることに挑戦してみたいと思っていました。
Pepperは開発ツールがChoregraphe(Choregrapherは振り付け師)というほどダンスが得意なため、先進技術である「ロボット」と日本の伝統文化の「日舞」という対局にある2つを掛け合わせたときに新しい世界観が生まれるのではないかと思いこのプロジェクトを立ち上げました。
最初相談をもらったときどう思いましたか?
末宗: もともと日舞には興味があったんですが、単に動きを作るだけでなく、日本舞踊家である花柳亜寿菜さんと一緒に作れると聞き興味を持ちました。
亜寿菜: 未知の世界だったため、一緒に踊れるなら踊りたいという気持ちで、只々楽しみでしかなかったです。でも実際にPepperが踊っている動画を見せてもらったときは本当に実現できるのか不安になりました。
マッキー小澤: ロボットマジックでギミックを作っていました。日舞用の扇子は硬いため実現できるか不安でしたが、無茶振りは好きなので挑戦したいと思いましたね。また日舞の先生と一緒にできる聞き、ワクワク感がありました。
小田部: これまで末宗さんと一緒にロボットの映像は作ったことがあったのですが、カット数が多めのパロディーっぽい雰囲気のものが多かったんです。もちろん日舞の映像を撮ったことはなかったですが、正面からのカットが一番綺麗なのではないというイメージが湧いてきました。
実際にやってみてどうでしたか?
亜寿菜: 心があるんじゃないかと思いました。命が吹き込まれたと思い、今でもうるっとくるくらい感動してしまいました。
村林: それは亜寿菜さん側が感情移入していったのかもしれないですね。どんな時にそれを感じましたか?
亜寿菜: 目を合うと通じあった瞬間や、向かい合って回るときも通じ合った感覚がありましたね。何度もそれを感じて、私のほうが新しい感覚を覚え勉強させてもらいました。
村林: 初めての取り組みで、むずかしいと思ったところはどんなどころですか?
亜寿菜: 最初動きを合わせた時はどうしようかと思いました。腰をひねれなかったので、カチカチした動きしかできないのかと思い、最初はむずかしいかもしれないと思いました。でも、首や手の動きなどを付けられることを知り、どんどんイメージが湧いてきました。
末宗: 腰や手首をひねれないこと、脇を閉めれない制約があるため、しなやかさを表現するために、首、腕、腰の動きのタイミングをずらしたり、左右の動きを一緒にしないなどの工夫をしました。でも、耐久性も考慮する必要があるためやりすぎずにシンプルな動きにしました。
マッキー小澤: 扇子の骨が内側に閉じる構造で、Pepperの力では簡単には開けられなかったです。分解してヤスリで擦り改造を加えました。途中挫折してしまい、開きっぱなしにすることも考えましたが、原点に戻って先生の動きを見返し、動きを研究し、できるだけPepper自身の力を活かすことで実現できました。
小田部: 通常は何度も編集でタイミングを合わせるのですが、その必要がなかったです。基本的には正面からのトリミングで綺麗に撮れると思いました。24フレームであえてコマ落ちさせて臨場感がでる演出をしました。テレビっぽくなく映画に近づけました。
エンドロールは元々は背景を黒にしていましたが、実際に国立劇場で亜寿菜さんの日舞を観させてもらい考え方が変わりました。国立劇場は舞台の幕から美しく、幕による演目の切り替えではなく、始まる前から綺麗な劇場でした。そのため「黒」で現実と映像の世界(非日常)を切り替えるのではなく、はじめから「白」で一体感を表現しました。
これを見る人に感じてほしいことは何ですか?
亜寿菜: Pepperと気持ちがつながったと思っているので、少しでも雰囲気を感じ取ってもらって感動につながったら嬉しいです。
末宗: ロボットは感情移入しやすい存在であること、一体感は人同士でなくても具
現化できることを感じてほしいですね。
村林: ロボットは単なる機械ではなく、人間の感情次第で一緒に共感したり一つの世界観を作れる存在であることが発見だったので、感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
今後チャレンジしたいことは何でしょう?
亜寿菜: もっと多くの人にこの感動を伝えたいです。もっと本格的に日本桂をかぶせて、着物を着せた演出をしてみたいです。
末宗: ロボットは実際に見てみないとわからないので実際にみてほしい。できれば大きなステージで実演したい。日本から世界に発信できるのはないかと思います。
村林: ロボットと人と古典的な文化が融合することで新しいものをつくりだせたと思います。今回で終わりではなく、もっと新しいことにチャレンジしていきたいですし、いつか海外の人も届けられたらと夢見ています!